意外と多い片眼の眼瞼下垂症

久しぶりに眼瞼下垂症のお話をします。最近はワクチン注射のお手伝いやクリニックの運営が順調に忙しくなってっきている事で真面目なブログの記事を書く時間が減っておりましたが少しでも眼瞼下垂症に興味を持っていただきたく頑張って書いていきます。この記事は若手形成外科医に向けて書かせていただきました。一般の方には非常に専門用語が多く読みづらい内容になっていますことをご了承ください。

今日のテーマは眼瞼下垂症の手術の中でも時々見られる、左右差のある眼瞼下垂症。一口に左右差と言っても眼瞼下垂の原因により難易度が結構変わってしまう手術です。意外と外科医泣かせで眼瞼下垂症の手術を始めたばっかりのDrは避けた方が良いでしょう。

自分は原因と症状の程度によって手術の方針を変えて対応しています。

①機械的な刺激で片眼だけが眼瞼下垂症になっている。あまり多くはないが時々見られアトピー性皮膚炎や目の擦りぐせがある人にでる。

②片眼にだけ先天性の眼瞼下垂症がある。

③先天性+加齢に伴い後天性の眼瞼下垂症が出ている。

この3つのパターンに当てはめてどれが一番近い状況かを判断し手術を組み立てます。

①②の場合は片眼の手術だけを行います。①は挙筋腱膜の前転だけをすればよいだけの事が多いため比較的精度の高い手術が可能です。②の場合、挙筋機能があれば挙筋の前転のみ、弱ければミュラーも前転する事になりますがミュラー筋を触り始めると急に出血や腫脹が強く起き始めるため開瞼幅を調整する事が難しい手術です。腫張は手術時間の経過と共に悪化していきやすいのである程度素早く手術を終える事、出血を最小限に抑えるなどの工夫が必要です。

③先天性に加齢性の眼瞼下垂症が被っている場合、先天性の方がどこまで開瞼できる様になるか予想が困難なため最難関と言えます。自分はまず先天性の悪い方の片眼から手術を始め、挙筋前転+ミュラー前転を仮止めした時点で加齢性の眼瞼下垂症の眼よりもしっかり開瞼幅を出せることを確認し、対側の手術を行います。ただし症状の強い方の開瞼幅は対側の手術を行うと少し開瞼の幅が狭くなるため、術中判断で対側を手術しないという選択肢も出てきますのであらかじめ患者さんに説明が必要です。理想の開瞼幅が得られそうな場合はやや過矯正にした後、対側の手術を挙筋前転のみで行い左右差を揃えて終了になります。文章だけだとそこまで難しくなさそうですがミュラー前転を仮止めした後再度調整でもう少し前転幅を取るなどの調整は非常に難しく腫脹が強く出るため左右差を揃えるための精度は①②と比べかなり低下する手術です。手術の時間などを考慮して片眼だけを手術し後日に反対側を手術するという施設もあると思いますがその場合、悪い方の目を先に手術しその時、本当に少しだけ過矯正になる様に手術をする様にすると良いと思います。片眼だけの手術にせよ同時に手術をするにせよある程度の勘と経験が必要だと思います。

術中の出血や腫脹は患者さんの血圧などにもかなり影響を受けるためなるべくリラックスできる雰囲気を作る様になるべく術中に患者さんと会話をしたり、和ませるなどの努力も必要です。幼少期から自分はかなり内向的な性格で形成外科になった当初は術者は手術だけ上手ければいいと思っていましたが全然そんなことがなかったと今更反省の毎日です。

①のパターンの患者さんに写真を載せる許可いただけたので載せておきます。

術後の写真は眉毛挙上を抑制した写真のみをあげさせていただきましたが非常によく開瞼幅もちょうどよく調整され抜糸時からあまり腫脹や内出血も少ないのが①の特徴です。

術後3ヶ月通常の開瞼位

術後3ヶ月です。やや左の眉毛を挙上するくせが残っていますがほぼ正常な見た目になってきました。このくらいまでなると浮腫みの症状もほぼ気にならないくらいまでになりました。

今後②③パターンの症例も患者さんのお許しがいただけましたらいずれブログにあげさせていただければと思います。